主要欧米助成財団の最新動向

先ほど紹介した笹川平和財団委託調査「国際グラント・メイキングの課題と展望:グローバル・フィランソロピーの時代における助成財団の新たな役割」に関連し、2013年3月に、欧米で主に国際交流・協力分野で活動している主要財団の動向調査を行いました。対象は、米国の主要16財団に日本・アジアに焦点をあてた4財団を加えた計20財団と、欧州の主要15財団です。

調査の結果、以下のように、欧米の主要助成財団は、様々なユニークな取り組みを行っていることが明らかになっています。報告書には、各財団の概要をそれぞれ1ページにまとめたシートも添付し、各財団の活動状況や組織概要が一目で分かるにようになっています。ぜひご覧下さい。報告書のPDFファイルはこちらからダウンロードできます。

主要欧米助成財団の最新動向

なお、この調査は、限られた時間と予算の中で行われたため、欧米助成財団の全容を見るにはまだ不十分です。今後、より包括的な調査が行われることが望まれます。

++++++++++++++++++++++++++

(以下、報告書の主要ポイントです。)

■米国と欧州の財団の主な相違点

  • 米国と欧米の財団の資産規模は、それほど大きく乖離していない。
  • 米国の財団が独自の案件発掘を指向するのに対し、欧州の財団は比較的、一般公募によるグラント・メイキングを指向する傾向にある。
  • 国際開発、医療保険・公衆衛生等の主要分野は欧米財団に共通。平和・安全保障、環境等のグローバルな課題に対しては米国財団の関心が高く、国際協力・交流等に特化した分野については欧州財団の関心が高い。
  • 米国財団がグローバルに事業を展開しているのに対し、欧州財団は、欧州域内・旧植民地国に焦点を当てた事業を展開する傾向が強い。

■事業分野別主要動向

(1)国際開発
  • 開発プロセスにおける金融の役割に対して、関心が高まっている。これは、マイクロ・ファイナンスのみに留まらず、中小農家に対する金融市場の開発や貧困層に対する金融包摂など、多様な領域に広がっている。
  • モバイル・テクノロジー等の新たなテクノロジーを利用したアプローチが広がりつつある。これは、モバイル通貨やモバイルを使ったマイクロ・ファイナンス・サービスの提供のみならず、腐敗防止等のガバナンス、災害支援などの広範な領域にわたっている。
  • 開発協力と少数民族コミュニティ保護や自然環境保護を総合的に支援するため、ローカル・コミュニティの自然資源へのアクセス・管理の権利や、農民の財産権の確立などの領域に対する関心が高まっている。
  • 開発協力の担い手として、社会的企業家の役割に関心が高まっている。開発途上国の社会的企業家の育成・支援のみならず、先進諸国の社会的企業家と協力して開発協力に取り組もうという動きも見られる。
(2)平和・安全保障
  • 主要財団の国際関係・協力分野における関心の重点がミレニアム目標に移行するに伴い、幾つかの財団が、平和・安全保障領域から撤退したり、プログラムの見直しを開始したりしている。
  • 平和・安全保障分野においても、新たなアクターが、従来には見られないユニークな切り口で事業を開始している。
(3)環境保護・気候変動問題
  • 気候変動により最も影響を受ける脆弱なコミュニティ支援を目的に、耐久・回復力(Resilience)向上のための様々なプロジェクトが進められている。
  • 環境保護のみならず、国際開発や保健医療、公衆衛生、安全保障分野等にも深く関わる水資源の保護・管理に対して関心が高まっている。
(4)市民社会・フィランソロピー
  • 旧ソ連・東欧諸国や開発途上国における市民社会の確立に対する支援は引き続き各財団が取り組んでいる。また、幾つかの財団は、グローバルな市民社会の確立のための支援や、これを支えるグローバル・フィランソロピー・ネットワークの構築を積極的に進めている。
  • グローバル・フィランソロピー促進の一環として、幾つかの財団は、近年、注目を集めている社会的インパクト投資の促進に向けた取り組みを進めている。

■国・地域別主要動向

(1)中国
  • 国際社会におけるスーパー・パワーとして台頭しつつある中国にどのように対処するかを、平和・安全保障上の重要な課題と位置づけ、多くの財団が、中国に関する調査・研究・対話プロジェクトを行っている。
  • 急速に経済発展を遂げる中、格差拡大や環境破壊が深刻化している中国の現状を踏まえ、幾つかの財団は、この問題の解決を図りつつ、同時に、中国における民主化や市民社会の発展を促進しようとするプロジェクトを実施している。
(2)中東・イスラム
  • 「アラブの春」を契機に流動化しつつある中東・イスラム地域の国際環境の変化を、平和・安全保障の観点から分析・検討し、地域の安定化を目指す取り組みが開始されている。
  • 「アラブの春」を踏まえ、現地団体への支援や人物交流・対話等を通じた、中東・イスラム地域における一層の民主化の促進と市民社会の確立を目指して、多くの財団が事業を開始している。
(3)旧ソ連・バルカン諸国
  • ロシア・新興独立国家等の旧ソ連諸国の民主化促進、市民社会確立は、引き続き重要な課題であり、多くの財団が、これに取り組んでいる。
  • バルカン諸国については、民主化促進、市民社会確立に加えて、欧州への統合促進やバルカン紛争による混乱からの平和的移行が重要な課題となっている。このような観点から、欧州の財団を中心に、多くの財団が、バルカン諸国支援に取り組んでいる。

■資金調達・グラント・メイキング手法における主要動向

(1)グラント・メイキング手法
  • よりインパクトの高い事業を行うため、多くの財団が、戦略的グラント・メイキング手法の開発・普及に取り組んでいる。
  • 事業規模の拡大や、限られた資源を効率的に活用するための財団間の調整などを目的に、欧米の主要財団は、財団コラボラティブの設立や共同基金の設立などに積極的に取り組んでいる。
  • アメリカの多くの財団が、グランティーとのパートナーシップを強化するために、「グランティー認知度報告」を導入し、グランティーに対するサービス改善に取り組んでいる。また、一部の財団は、グランティーのキャパシティ・ビルディング支援に積極的に取り組んでいる。
  • アメリカの多くの主要財団が、基本財産の一部をプログラム目的に沿って運用するプログラム関連投資を導入すると共に、一部の財団は、自ら社会的インパクト投資に乗り出している。
(2)資金調達手法
  • 幾つかの欧州の財団は、基本財産の運用収入に加えて、米国のコミュニティ財団で一般化しているドナー・アドバイズド・ファンド等の信託基金や一般からの寄附金募集に積極的に取り組んでいる。また、これ以外にも、多様な資金調達方法を模索している。
  • 幾つかの財団は、自己の専門分野を活かし、インターメディアリー団体として、より資金規模の大きな財団からの資金提供を受けて事業を実施するという方法を導入している。また、一部の欧州財団は、米国に法人を設立し、この法人を通じた米国財団からの資金提供や米国における寄附募集を積極的に追求している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。